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【東横特急が駆ける】東急東横線の時刻表考察《2017.3.25ダイヤ改正》

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この記事では、東京急行電鉄・東横線のダイヤ考察を行っています。

〈H29.3.25改正対応〉

東横線は東京都渋谷区《渋谷》から《自由が丘》《田園調布》といった高級住宅街から現在大発展中の《武蔵小杉》などを経由して神奈川県横浜市西区《横浜》に至る24,2kmの路線です。

路線概要

 1926年(大正15年)に東京横浜電鉄によって《丸子多摩川(現:多摩川)》から《神奈川(反町〜横浜間、現:廃止)》の間が開通したのが当路線の始まりで、27年に《丸子多摩川》から《渋谷》まで延伸したのを機に東横線という名称が付けられました。その後、32年までに《桜木町(現:根岸線の同駅と隣接、現:廃止)》までが開業し、全通しました。35年には早くも[急行]が設定され、優等運転が行われました。

 戦前には戦時統合に伴う会社の合併が推奨され、東京横浜電鉄は経営者が同一人物であった目黒蒲田電鉄(現在の目黒線と東急多摩川線を運営)に吸収されることになりました。その後、小田急電鉄と京浜電気鉄道(現:京浜急行電鉄)と合併した際に東京急行電鉄という現行の会社名が誕生しています。

 戦後にはこの大東急は分割され、新生東急となりました。同会社の基幹路線として、高度経済成長期には発展していきました。1964年(昭和39年)には《中目黒》から東京メトロ日比谷線と直通運転を開始し、念願の都心乗り入れを果たしています。しかしながら18m級車両しか入れない日比谷線では東横線の輸送量増加に追いつけず、2013年(平成25年)の東京メトロ副都心線乗り入れを機に日比谷線との直通運転は終了しました。

 横浜方では長きに渡って《桜木町》が終着となっていましたが、2004年(平成16年)のみなとみらい線開業にあわせて《横浜》を地下化するとともに同路線との直通運転を開始。《横浜》から《桜木町》の区間は廃止となりました。当時《桜木町》は約10万人の乗降客数を持つ駅であり、この区間の廃止には強い反対が寄せられていましたが、廃止を免れることはできませんでした。現在でも根岸線の同区間では、東横線の廃線跡を見ることができます。

 とはいえ、新たな乗り入れ先のみなとみらい線は横浜の再開発地域みなとみらい21地区や日本最大の中華街がある《元町・中華街》を通っており、利用客数は順調に推移しています。また、2017年からは新たな試みとして、土日限りではありますが《元町・中華街》からみなとみらい線・東急東横線・東京メトロ副都心線・西武池袋線・西武秩父線という5路線を直通して《西武秩父》に至る有料座席指定列車[S-TRAIN]の運転を開始しており、新たな観光需要を引き出す試みがなされています。慢性的な混雑に悩まされる東横線ですが、これを機に今後西武や京急、京王に習って座席指定通勤ライナーを運転するのか、期待が高まっています。

 

路線設備と列車種別

駅一覧

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 図1.駅一覧と停車パターン

 始発である《渋谷》は2013年(平成25年)に地下化し、東京メトロ副都心線との共用駅となっています。終点である《横浜》ではみなとみらい線と接続しています。書類上は《田園調布》から《日吉》の間が複々線区間となっていますが、この区間では外側線が東横線専用、内側線が目黒線専用となっているため、実質的には全区間複線路線となっています。追い越し設備は《渋谷》《自由が丘》《元住吉》《菊名》にあります。車両基地は《元住吉》に併設しています。

種別紹介

[S-TRAIN]

2017年(平成29年)ダイヤ改正より運転を始めた、東急初の座席指定列車です。S-TRAIN自体は西武池袋線の座席指定通勤ライナーなのですが、休日に限り当路線を経由してみなとみらい線の《元町・中華街》まで乗り入れます。

専用の西武40000系車両が使用され、当路線唯一のクロスシート車両となります。東横線内は《渋谷》《自由が丘》《横浜》のみで客扱いを行います。(その他、特急停車駅にて運転停車を行います)

[特急]

2001年(平成13年)より運転を始めた、東急初の特急列車*1です。

元々は後述の[急行]が長きに渡って東横線の優等種別となっていましたが、年が立つに連れて停車駅が増加していった結果、唯一の優等種別であるのに、通過駅より停車駅の方が多いという逆転現象が発生していました。そんな中で、2001年にJR湘南新宿ラインが開業するにあたり、《渋谷》と《横浜》の全区間で新たな競合関係が生まれてしまったのです。

これに対抗する形で、東横線では新たに停車駅を最小限に抑えた[特急]を設定し、『東横特急』という愛称をつけてPRを行い、JRに対抗することとなりました。2016年(平成28年)からは乗り入れ先の路線全区間において優等種別となる[特急]は[Fライナー特急]と名付けられ、現在では東京メトロ副都心線《池袋》までという2社を跨いだ長い区間に渡り競合関係が続いています。

種別カラーはオレンジ色。途中停車駅は《中目黒》《自由が丘》《武蔵小杉》《菊名》です。

通勤特急]

東横線の通勤種別で、平日朝ラッシュと夕ラッシュ時間帯に特急に変わって運転されます。[特急]停車駅に加えて、横浜市営地下鉄グリーンライン乗換駅かつ目黒線の始発駅である《日吉》に停車します。

[急行]

戦前の1935年(昭和10年)から運転を始め、戦中に一時中断が成されたものの、現在に渡って運転が続く東横線の基本優等種別です。沿線の開発に伴って停車駅が増加した結果、2駅以上連続して通過する区間が《菊名》から《横浜》のみとなり、「隔駅停車」と揶揄されています。この停車パターンは現在でも続いており、[特急]や[通勤特急]が登場する一因にもなっています。

種別カラーは赤色。途中停車駅は[特急]停車駅に加えて、《学芸大学》《田園調布》《多摩川》《日吉》《網島》に停車します。《田園調布》から《日吉》 までの目黒線乗り入れ区間では、同路線直通の[急行]も同じ停車駅で運転されており、この区間では運転本数が2倍となっています。

[普通]

各駅に停車します。[急行]と同様に、目黒線が乗り入れる《田園調布》〜《日吉》間では、東横線と目黒線直通の[普通]がほぼ1:1の割合で運転されています。種別カラーは青色。

時間帯別ダイヤ・時刻表考察

東横線複々線区間である《田園調布》から《日吉》の区間のうち、内側線を走る目黒線直通列車の詳細に関しては目黒線記事をご覧ください。

www.trainlabo.com

 

朝(始発~8時代)

◇上り初電(一番初めに運行する列車)

[各停]《元住吉》05:00発→《渋谷》05:20着(副都心線直通)

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 図2.朝ラッシュ時刻表一例(中目黒駅上り)

朝ラッシュ上りの1時間あたりの最大運転本数は《菊名》→《渋谷》の間で、

  • [通勤特急]……4本
  • [急行]……4本
  • [各停]……15本

です。[通勤特急][急行]の優等系の合間に[各停]が2本入るダイヤを基調としています。同区間の1時間あたりの合計運転本数は23本と、他の私鉄幹線と比較すると若干控えめな本数に映りますが、複々線区間の《日吉》〜《田園調布》の区間において目黒線と合算すると

  • [通勤特急]……4本
  • [急行]……13本(目黒線9本)
  • [各停]……27本(目黒線13本)

の合計で44本となり、東武伊勢崎線小田急小田原線と並んで複々線区間の輸送力の巨大さを思い知らされます。

デイタイム(9時~15時代)

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 図3.デイタイム時刻表一例(菊名駅上り)

デイタイム下りの1時間あたりの運転本数は《菊名》→《渋谷》の間で、

  • [F特急]……4本
  • [急行]……4本
  • [各停]……10本

です。日比谷線直通運転の名残で、《菊名》発着の[各停]が毎時2本運転されます。また、横浜方においては全列車がみなとみらい線に、渋谷方において毎時4本[普通]が折り返すほかは副都心線に乗り入れています。各区間に置けるデイタイム1時間あたりの運転本数は以下のとおりです。

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 図4.デイタイムの運転本数/1H

夕・夜(16時代~終電)

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 図5.夕ラッシュ時刻表一例(渋谷駅下り)

夕ラッシュ下りの運転本数は《渋谷》→《菊名》の間で、

  • [通勤特急]……4本
  • [急行]……4本
  • [普通]……12本

です。[特急]が[通勤急行]に置き換えられ、《菊名》発着の[各停]が2本増加となるほかは、デイタイム時間帯と変わらないダイヤとなっています。そのため、《菊名》以南では日中と本数が全く同じという現象が起きています。

各区間に置ける夕ラッシュ1時間あたりの運転本数は以下のとおりです。

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 図6.夕ラッシュの運転本数/1H

◇下り終電(一番遅くまで運行する列車)

[各停]《渋谷》00:37発→《菊名》01:09着

 

まとめ

  • 渋谷と横浜を結ぶ元祖ともいえる東横線は、優等列車が長きに渡って隔駅停車のみという状態であったが、湘南新宿ラインという競合相手の出現によって東横特急が設定され、速達性が大幅に改善した。
  • 両端が渋谷・横浜と典型的な都市間鉄道であり、全区間を通して本数は充実している。一方で輸送量の限界も近づいていたため、2000年からは東横線の複々線区間に目黒線が乗り入れる形で大幅な増便を図っている。
  • 2004年からはみなとみらい線と、2013年からは東京メトロ副都心線、並びに同路線を介して西武池袋線東武東上線との直通運転を行っており、東横間だけでない広域輸送の役割も担うようになっている。

 

本日はご覧いただきありがとうございました♪

 

???「桜木町のほうが良かったなんて言わないで!」

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ごあんない

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*1:ここでの[特急]とは、一部の私鉄で運転される無料の特急列車のこと。他に京王や京急、京成など。