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【TOJO HARD】東武東上線の時刻表考察《2016.3.26ダイヤ改正》

タイトル画像:東武50000系車両

この記事では、東武鉄道・東上線のダイヤ考察を行っています。

〈2016年改正対応、2017年は未改正〉

東上線は、東京都豊島区《池袋》から埼玉県川越市《川越市》を経由して大里郡寄居町《寄居》に至る75.0kmの路線です。

路線概要

 東武東上線は、1914年(大正3年)に旧東上鉄道が《池袋》から《田面沢(川越付近、現:廃止)》までの間を開業させたのが始まりとなります。路線名の『東上』に現れるように、東京と上野(こうずけ、現在の群馬県)を結ぶことを目的に建設された路線で、25年までに《寄居》までの区間が開通しています。本来なら更に群馬県の高崎市までの建設が計画されていたのですが、国鉄八高線の建設により構想は頓挫。結果的に現在の《池袋》から《寄居》までの間で全通、という形になってしまいました。また東上鉄道自体も、1920年(大正9年)に東武鉄道と合併しました。

 戦後からは新駅の追加が進み、沿線開発は順調に進みました。1987年(昭和62年)からは旧営団の有楽町線が都心方面から《和光市》まで延伸してきて東上線と接続、直通運転を開始しました。2008年(平成20年)からは副都心線開通によりこちらとも直通運転を開始、13年からは副都心線《渋谷》の改良工事が完了したことにより、東急東横線みなとみらい線とも直通運転が始まり、東上線は遠く横浜の《元町・中華街》まで乗り入れる長距離列車を多数抱える路線となりました。

 伊勢崎線を筆頭とした本線系統とは直接線路が繋がっておらず、支線も越生線以外無く、なんだかちょっと仲間はずれの東上線ですが、営業成績は東武鉄道一を誇っています。東洋経済による営業係数*1試算では、東上線の営業係数は60.6と、東武鉄道はおろか試算されている私鉄の中で1番良好な数値となっています。しかしながら、あまりに営業成績が良すぎたためか、放っておいても利益が上がるからと、新車は中々入らない、優等列車の利便性が低いなど本線系統と相対的に長くの間不遇の扱いを受けており、某掲示板などでは乗り入れ先の東京メトロのCMで使われていたキャッチフレーズ『TOKYO HEART』のパロディで『TOJO HARD』と表されるほどでした。

 そんな状態も先述の副都心線が開業した2008年に『新・東上線』と謳ったダイヤ改正を実施し、50年台ぶりの有料列車[TJライナー]や[快速急行]の新設など、ダイヤ面で大幅な改革がなされました。その後も13年に[快速]の新設によって日中時間帯の優等運転区間の拡大がなされ、16年には副都心線には直通する優等列車[Fライナー(急行)]の運転開始と、利便性向上が図られています。また車両面では、2012年に長らく主力であった『私鉄版103系』こと8000系車両が《小川町》以南で完全撤退し、最新系式である50000系車両の導入が進められました。

 副都心線乗り入れは都心直結につながる反面、《池袋》から《和光市》の間で完全に競合してしまうという諸刃の剣であり、Fライナーの行く末など、今後のダイヤに注目な路線です。

路線設備と列車種別

駅一覧

東上線路線図

 図1.駅一覧と停車パターン

種別紹介

[TJライナー]

2008年(平成20年)のダイヤ改正から運転を始めた、東上線唯一の有料優等列車です。いわゆる通勤ライナー的位置づけにあり、ロングシートとクロスシートの両方に転換が可能な50090系車両が専任に使用されています。

種別カラーは、路線図などではオレンジ色、ロゴマークなどでは紺色が使われています。途中停車駅は《ふじみ野》《川越》《川越市(下りのみ)》《坂戸》《東松山》と、《東松山》以西は各駅に停車します。

この形式の通勤ライナーは関東私鉄の先駆けとなり、これに続いて後に西武鉄道がSトレインという名前で運転開始、京王電鉄も2018年度中に運転開始予定です。

[快速急行]

2008年ダイヤ改正で廃止された[特急]の後を継ぐ形で運転を開始した、TJライナーを除いた最優等種別です。主に下り[TJライナー]として下った車両をを《池袋》まで送り返す列車が、つまり夕夜時間帯上りに[快速急行]は運転されます。このほか下り列車は、休日朝時間帯のみ数本が運転されます。

種別カラーは青色。途中停車駅は《和光市》《志木》《川越》《川越市》《坂戸》《東松山》と、《東松山》以西各駅に停車します。

[快速]

2013年(平成25年)にまさかの運転開始した、東上線初の快速列車です。立ち位置としては『急行以上、快速急行以下』と、他社にはみられない位置づけとなっています。日中時間帯でも《東松山》まで優等運転を行い速達化に貢献したほか、《森林公園》〜《小川町》では[普通]の役割を担っています。なんと2017年ダイヤ改正で本線系統から[快速]が廃止。まさかの東上線[快速]が東武唯一になってしまいました。

種別カラーは水色。途中《川越市》までは後述する[急行]と同一の停車駅となり、以西は[快速急行]停車駅に加えて《若葉》に停車します。

[急行]

東上線の基本優等種別です。[快速]が設定されるまでの長い間、最優等種別として降臨してきました。大改革が行われたのは2016年ダイヤ改正で、それまで大人の事情により《池袋》発着だった[急行]が、本格的に東京メトロ副都心線へ、さらにはその先の東急東横線・みなとみらい線まで乗り入れるようになりました。これらの全区間で優等運転を行う列車は愛称として[Fライナー]が冠されます。なぜか[快速急行]には冠されません。

種別カラーは赤色、Fライナーは加えて緑色のFマークが付きます。途中停車駅は《成増》《和光市》《朝霞台》《志木》《ふじみ野》《川越》《川越市》と、以西は各駅に停車します。

[準急]

準優等種別です。《池袋》から《成増》までノンストップで運転した後、以西は各駅に停車します。この停車駅の関係上、地下鉄線に乗り入れる列車は設定されておらず、全列車が《池袋》発着となります。2008年の『新・東上線』ダイヤ改正以降、増便と減便が繰り返されており、ダイヤ作成の難しさを感じさせられます。

[普通]

各駅に停車します。大きく分けて《池袋》〜《成増》間で折り返し運転を行う列車と、地下鉄線から《和光市》以西に運行する列車があります。《和光市》以西に関しては、優等種別が順々に以西各駅に停車するパターンとなっているため、[普通]が運転されない時間帯がある区間があります。

また、《小川町》以西は[普通]のみ、越生線と共通の4両ワンマン列車となっています。

時間帯別ダイヤ・時刻表考察

東上線は《小川町》にて完全な系統分離が行われています。本記事では以西(小川町〜寄居)と以東(池袋〜小川町)に分けて考察を行います。

小川町〜寄居

朝(始発~8時代)

◇上り初電(一番初めに運行する列車)

[普通]《寄居》5:11発→《小川町》5:33着

寄居駅朝ラッシュ時刻表

 図2.朝ラッシュ時刻表一例(寄居駅上り)

朝時間帯上りの1時間あたりの運転本数は《寄居》→《小川町》の間で、

  • [普通]……4本

です。すべての列車が《小川町》にて《池袋》方面の列車と接続します。

デイタイム(9時~15時代)

寄居駅デイタイム時刻表

 図3.デイタイム時刻表一例(寄居駅上り)

30分間隔の毎時2本の運転です。

デイタイム下りの1時間あたりの運転本数は《寄居》→《小川町》の間で、

  • [普通]……2本

です。全列車が《小川町》にて《池袋》方面の[快速]と接続しています。この区間はJR八高線と平行していますが、本数・輸送力共に東上線が圧倒しています。

東上線(小川町〜寄居)デイタイム運転本数

 図4.デイタイムの運転本数/1H

夕・夜(16時代~終電)

と小川町駅夕ラッシュ時刻表

 図5.夕ラッシュ時刻表一例(小川町駅下り)

夕・夜時間帯下りの運転本数は《小川町》→《寄居》の間で、

  • [普通]……3本

です。

東上線(小川町〜寄居)夕ラッシュ運転本数

 図6.夕ラッシュの運転本数/1H

◇下り終電(一番遅くまで運行する列車)

[普通]《小川町》23:44発→《寄居》23:59着

池袋〜小川町

朝(始発~8時代)

◇上り初電(一番初めに運行する列車)

[準急]《川越市》4:30発→《池袋》5:29着

志木駅朝ラッシュ時刻表

 図1.朝ラッシュ時刻表一例(志木駅上り)

朝ラッシュ上りの運転本数は《志木》→《和光市》の間で、

  • [急行]……8本(4本/1H)
  • [準急]……13本(7.5本/1H)
  • [各停]……29本(14.5本/1H)

です。《志木》〜《和光市》間の東上線唯一の複々線区間を活かして、《志木》始発の列車が多く設定されています。また、この区間では[準急]は各駅に停車を行うため、朝ラッシュ時間帯は各駅に停車する列車が主体として運転されることが伺えます。

デイタイム(9時~15時代)

和光市駅デイタイム時刻表

 図3.デイタイム時刻表一例(和光市駅下り)

デイタイム下りの運転本数は《和光市》→《川越市》の間で、

  • [快速]……2本
  • [急行]……4本
  • [準急][普通]……8本

です。《池袋》〜《和光市》で競合する関係上か、地下鉄線と一体運用となっている本線系統と比べて、地下鉄線に直通する列車が毎時4本のみと控えめな印象を受けます。

下の図のように、[準急]は《成増》以西から、[急行]は《川越市》以西から、[快速]は《森林公園》以西から各駅に停車します。特に《川越市》以西では日中時間帯において普通列車が運転されないという現象が起こっています。(同様の例として、伊勢崎線東武動物公園〜久喜間、京王相模原線など)

各区間に置ける、デイタイム1時間辺りの運転本数は以下のとおりです。

東上線(池袋〜小川町)デイタイム区間別運転本数

 図4.デイタイムの運転本数/1H

夕・夜(16時代~終電)

池袋駅夕ラッシュ時刻表

 図5.夕ラッシュ時刻表一例(池袋駅下り)

夕ラッシュ下りの1時間あたりの運転本数は《池袋》→《成増》の間で、

  • [TJライナー]……2本
  • [急行]……5本
  • [準急]……4本
  • [普通]……8本

です。夕ラッシュ時間帯は先述の通り、通勤ライナーである[TJライナー]が30分ごとに毎時2本運転されます。また、《池袋》発着の列車と地下鉄線直通列車と共に《志木》折り返しの列車が多数設定されています。各区間に置ける、夕ラッシュ1時間あたりの運転本数は以下のとおりです。

東上線(池袋〜小川町)夕ラッシュ区間別運転本数

 図6.夕ラッシュの運転本数/1H

また、夕ラッシュ時上りの運転体系としては、[TJライナー]の代わりに[快速急行]が30分間隔で毎時2本運転されるほか、[急行]は全区間を通して毎時4本となり、代わりに[各停]が1本増加となります。

◇下り終電(一番遅くまで運行する列車)

[準急]《池袋》0:44発→《川越市》1:23着

 

まとめ

  • 2008年のダイヤ改正より東上線は、[TJライナー]の新設を筆頭にダイヤ面で大改革が成されている。
  • 2013年からは[快速]の運転開始により日中時間帯においても《川越市》以西で優等運転を行うようになり、利便性の向上が図られている。
  • 《池袋》〜《和光市》で地下鉄有楽町・副都心線と競合する関係上、長くの間直通運転は消極的な体制をとってきたが、2016年より『Fライナー』と愛称をつけ、優等種別の乗り入れを本格的に始めている。
  • ちなみにTOJO HARD言われる由縁(のひとつ)ともなっていた8000系車両は、50000系車両の本格投入と30000系の転入により、2012年をもって《小川町》以東から完全撤退している。もう5年も前の話である。

 

本日はご覧いただきありがとうございました♪

 

???「東武東上線唯一の仲間なのです。」

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ごあんない

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*1:100円を稼ぐのにかかる費用。ざっくり言うと100より大きいほど赤字、小さいほど黒字。ちなみに同じく東洋経済の試算では、JR山手線は50台、東京メガループ各線は60後半〜80前半